COLUMN

助成金コラム

助成金制度推進センターの顧問(元厚労省政策統括)が、制度の読み方や活用の勘所を実務の目線で書き下ろします。月 2 本のペースで更新します。

最低賃金1,177円時代をどう読むか

今月から、新しい最低賃金が順次適用されています。

2026年度の全国加重平均は時給1,177円で、前年度より56円の引き上げとなりました。過去最大だった昨年度の66円に続く大幅な上昇です。

最も高い東京都は1,280円、最も低い宮崎県でも1,085円で、適用日は都道府県ごとに10月1日から12月2日までと分かれています。
まずは自社の事業所がある地域の金額と適用日を確認してください。
派遣社員には、派遣先の地域の最低賃金が適用される点にも注意が必要です。

そもそも最低賃金とは、法律で定められた賃金の最低ラインです。
正社員かパートかを問わず、働くすべての人に適用されます。
金額は毎年夏に、働く人の代表、会社側の代表、学識経験者の三者でつくる国の審議会が引き上げの目安を示し、それをもとに各都道府県の審議会が決めます。
判断の材料は、働く人の生活費、世の中の賃金の水準、会社の支払い能力の三つです。

長く労働行政に携わってきた立場から見ると、今年は地方の動きが目立ちました。
国の目安を上回る額を決めた府県が33にのぼり、地域の差は少しずつ縮まっています。
人手不足の中、働き手を都市部に奪われたくないという地方の危機感の表れです。
政府は全国平均1,500円の達成時期を遅くとも2030年代前半としましたが、引き上げの流れは今後も続くと見ておくべきです。

経営者の方に最も注意していただきたいのが、自社の賃金が最低賃金を下回っていないかの点検です。時給で働く方だけでなく、月給の社員も対象です。
月給から通勤手当、家族手当、残業代、賞与などを除いた額を、会社で決めた1か月の平均労働時間で割ると、時給に直せます。
新卒の社員や地方の事業所は特に見落としがちです。試用期間中でも、労働局の許可なく最低賃金を下回ることはできません。下回る賃金の約束は無効となり、差額の支払いが必要になるほか、50万円以下の罰金の対象にもなります。

給料の締め日の途中で適用日を迎える場合も要注意です。
新しい金額は、適用日以降に働いた分から支払う必要があります。例えば月末締めの会社で、10月15日に適用が始まる地域であれば、10月分の給料のうち15日以降に働いた分を新しい金額で計算します。時給を見直したときは、本人への通知とあわせて、労働条件通知書の更新も忘れずに行ってください。

また、低い賃金の層だけを上げると、その上の層との差が縮まります。
中堅社員のやる気を損なわないよう、賃金全体の見直しや、数年先を見すえた人件費の計画を立てておくことが大切です。
国には、賃金を一定額以上引き上げ、あわせて仕事の効率を高める設備投資などを行った中小企業に、その費用の一部を助成する業務改善助成金があり、上限は最大600万円です。
申請の期限は地域の適用日の前日などとされているため、適用日がまだ先の地域でも、早めに都道府県の労働局へ相談してください。

最低賃金の引き上げは、経営にとって重荷であると同時に、人材を確保し、生産性を高めるきっかけにもなります。
賃上げを前提に経営の形を見直す企業こそが、人手不足の時代を乗り切っていくと私は考えています。

(全国の最低賃金一覧はこちらから:https://qr.paps.jp/057j7)

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